第22回グラミー賞(1980):Best Rock Vocal Performance部門が初創設、ロックが正式ジャンルに昇格
更新日:3 時間前
1980年2月27日、シュライン・オーディトリアムで開催された第22回グラミー賞で、Best Rock Vocal Performance部門が男性/女性双方で史上初創設された。男性部門の初代受賞者はボブ・ディラン「Gotta Serve Somebody」、女性部門はドナ・サマー「Hot Stuff」。ロックが「ポップス内サブジャンル」から「独立した正式評価ジャンル」へ昇格した歴史的瞬間である。
出来事の背景
1960年代後半からビートルズ、ローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペリン、ピンク・フロイドなどが世界的にロックを主流音楽に押し上げて10年以上経過していたが、グラミーは長らくロック専用の評価部門を設けていなかった。ハード・ロック/ヘヴィ・メタル系のアーティストが「Best Pop Vocal」のサブジャンルとして審査されることへの不満が業界内で高まっていた。
1970年代後半、パンク・ロック、ニューウェーブ、アリーナ・ロックの台頭により、もはやロックを「ポップス」に内包させる時代ではないという認識が決定的になった。レコード・アカデミーが正式部門化を決定。
初代候補にはボブ・ディラン、Rod Stewart、Billy Joel、Robert Palmerらが並び、女性部門ではドナ・サマー、Carly Simon、Bonnie Tyler、Carolyne Mas、Suzi Quatroが競った。
受賞の瞬間
Best Rock Vocal Performance(Male)はボブ・ディラン「Gotta Serve Somebody」が受賞。1979年のキリスト教改宗後の作品で、ディラン自身は「神への奉仕」をテーマにした楽曲。彼にとってグラミー本部門初受賞でもあり、後の「ロック詩聖」評価を強化する出来事となった。
Best Rock Vocal Performance(Female)はドナ・サマー「Hot Stuff」が受賞。ディスコ・クイーンと呼ばれた彼女がロック部門で受賞したことは、ジャンル境界の流動性を示す象徴的事件だった。
AOTYはBilly Joel『52nd Street』、ROTYはThe Doobie Brothers「What a Fool Believes」、SOTYも同曲、Best New ArtistはRickie Lee Jonesが受賞。
文化的・産業的意義
Best Rock部門の独立創設は、1980年代のロック黄金期(U2、Bruce Springsteen、Bon Jovi、Guns N' Roses、Metallica、Nirvana)への評価インフラを整備した極めて重要な制度設計だった。1989年にはBest Metal Performanceも創設され、1990年代以降のオルタナティブ・ロック評価へと続く。
ドナ・サマーの女性部門受賞は、ジャンルが歌手の表現意図とアレンジによって流動的に変化することを公式に認めた前例となった。後年マドンナ、テイラー・スウィフトらがポップ/ロック/カントリーを越境する評価軸の原型がここにある。
GAJ視点 / 日本の音楽業界への示唆
日本のレコード大賞・日本ゴールドディスク大賞などの国内アワードも、ジャンル区分の見直しを迫られている。J-POP/J-ROCK/J-HIP-HOP/J-R&B/アニソン/シティポップ/ボカロなど多様化したジャンル現状をどう審査制度に反映するかは、グラミーの1980年改革が良い参考事例となる。
GAJは、日本の音楽賞制度のジャンル設計についても継続的に提言していく。
発行:株式会社BRUSH MUSIC / GAJ ヒストリー


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