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【第34回 グラミー賞 1992】Natalie Cole が亡き父 Nat King Cole とのバーチャル・デュエット『Unforgettable』で Big 3 制覇 + Whoopi Goldberg が史上初の女性司会

8月16日
読了時間: 3分

更新日:3 時間前

1992年2月25日、ニューヨーク・ラジオシティ・ミュージックホールで開催された第34回グラミー賞は、グラミー史上もっとも感動的な家族の物語と、もうひとつの「史上初」を同時に生んだ夜だった。Natalie Cole はアルバム『Unforgettable... with Love』で、1965年に他界した父 Nat "King" Cole の歌声と「Unforgettable」をバーチャル・デュエットし、Album of the Year・Record of the Year・Song of the Year の Big 3 を含む7冠を獲得。Whoopi Goldberg はグラミー史上初の女性単独司会者を務めた。

出来事の背景

Nat "King" Cole は20世紀ポップス・ジャズの巨匠で、1965年に肺癌で45歳の若さで死去。娘 Natalie Cole は1975年に R&B 歌手としてデビューし、1970年代後半にスターダムに乗ったが、コカイン依存症で長らく低迷。1991年にプロデューサー David Foster とともに、父 Nat の代表曲群を娘がカバーする企画アルバム『Unforgettable... with Love』を完成させた。

本作のクライマックスは表題曲「Unforgettable」。1951年に父 Nat が録音したオリジナル・ボーカル・トラックに、当時のテクノロジーで娘 Natalie の新録ボーカルを重ね、父と娘のバーチャル・デュエットを構築した。デジタル・リマスタリング技術と多重録音技術の組み合わせが生んだ、グラミー史上もっとも感情的に強烈なレコーディング作品のひとつである。

受賞の瞬間

Natalie Cole は Big 3(Album of the Year、Record of the Year、Song of the Year)に加え、Best Traditional Pop Performance、Best Instrumental Arrangement Accompanying Vocals、Best Engineered Album — Non-Classical を獲得、合計7冠(うち Producer of the Year を David Foster が獲得)を達成。Album of the Year を黒人女性が受賞するのは史上初という記録も樹立した。

受賞スピーチで Natalie は涙ながらに「Daddy, I love you」と亡き父に呼びかけ、業界全体が涙した。彼女自身が長年戦った薬物依存からの完全復活と、父との「再会」を同時に祝う夜となった。

Whoopi Goldberg、史上初の女性司会

同夜の司会者は Whoopi Goldberg。グラミー賞34年の歴史で、女性が単独で司会を務めたのは史上初。前年(1990)に『Ghost』で Academy Award を獲得した彼女は、トークショー的な軽妙さと社会的鋭さを両立させたパフォーマンスで授賞式の雰囲気を一新した。以後、女性司会の道筋を切り開いた歴史的回となる。

文化的・産業的意義

バーチャル・デュエットは、現代の「故人ホログラム・パフォーマンス」(Tupac at Coachella 2012、Whitney Houston Holographic Tour 2020)や、AI 音声合成による故人ボーカル復元(Beatles「Now and Then」2023)へとつながる技術的・倫理的議論の出発点となった。Natalie Cole『Unforgettable』は「家族の同意・遺族のキュレーション・芸術的真摯さ」が揃った理想的事例として、現在も故人ボーカル使用の倫理的参照軸となっている。

同夜の Whoopi Goldberg 司会は、授賞式運営における性別バランスの議論を加速させ、以後 Queen Latifah、Alicia Keys、Trevor Noah(男性)、Taylor Swift プレゼンターなど、多様性を意識したキャスティングの先駆けとなった。

GAJ 視点 / 日本の音楽業界への示唆

日本でも美空ひばり AI 復活(2019 NHK)、坂本龍一のホログラム企画など、故人アーティストの「技術による再演」は普遍的テーマ。Natalie Cole 事例は「遺族による直接プロデュース × 楽曲選定の必然性 × 商業的成功」の3条件が揃った稀有な成功例として、日本の音楽プロデューサーが学ぶべきベンチマークとなる。

発行:株式会社BRUSH MUSIC / GAJ ヒストリー

 
 
 

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