top of page
BM-LOGO2020-横一段 白.png

音楽IPを世界で収益化する前に、権利の内訳を分ける

8月31日
読了時間: 4分

更新日:2 時間前

「楽曲を海外に出したい」という相談を受けたとき、BRUSH MUSIC が最初に確認するのは配信先ではなく、その楽曲の権利がいま誰のものになっているかです。ここが整理されていないまま進むと、後から収益を分けられなくなるか、そもそも回収できなくなります。

まず市場の実態を数字でつかむ

国際レコード産業連盟(IFPI)が公表した Global Music Report 2026 によれば、2025年の世界のレコード音楽売上は前年比6.4%増の317億ドルで、11年連続の成長となりました。有料サブスクの売上は8.8%増で全体の52.4%を占め、有料会員数は8冄3,700万アカウントに達しています。(いずれも IFPI 発表による)

注目すべきは伸びている地域です。同レポートでは、ラテンアメリカが17.1%と最も高い伸びを示し、中東・北アフリカとサブサハラ・アフリカが共に15.2%、アジアが10.9%と続きます。日本は引き続き米国に次ぐ世界第2位の市場です。

つまり「海外展開」と一括りにして欧米を想定するのは、現在の伸びとはズレています。どの市場に入るのかを先に決めないと、施策も予算も決まりません。

一つの楽曲には、性質の違う権利が共存している

「音楽IP」とひとまとめに呼ばれますが、日本の著作権法上は別の権利です。ここを混ざせたまま契約を結ぶのが、最もよくある事故です。

  • 著作権(作詞・作曲):楽曲そのものに発生する権利。作家に帰属し、日本では JASRAC や NexTone などの管理事業者に信託するケースが多い。なお著作者人格権は譲渡できない

  • 著作隣接権(原盤権・実演家の権利):完成した音源(原盤)に発生する権利。制作費を負担した側に帰属するのが原則で、作家の著作権とは別に動く

海外のプラットフォームやパートナーと話をするとき、先方が見ているのは「この音源を使う権限を、あなたが単独で与えられるのか」です。共同制作やコラボの楽曲でこれが答えられないと、その時点で話が止まります。

サブスクの収益をどう見るか

サブスクの分配は、プラットフォームの総収入を総再生数で割って配分する方式が主流です。この方式では、1再生あたりの単価は固定されず、市場全体の再生数や国ごとの単価で変動します。したがって、「サブスクに出せば安定収入になる」という説明は正確ではありません。当社は具体的な単価を掛け算した収入例を提示しない方針を取っています。前提が変われば結果が変わる数字を、確定した収入のように見せるのは誤誘導になるからです。

実務上は、ストリーミングを「収益の本体」ではなく「届いている場所を測る計器」として扱い、そのデータを元にライブ、タイアップ(映像・広告への楽曲使用)、グッズなどの収益を組み立てるのが現実的です。

取り組む順番

  1. 権利の棚卸し。楽曲ごとに、著作権の持ち分と管理委託先、原盤権の帰属、実演家からの許諾の有無を一覧にする。ここが全ての前提になる

  2. メタデータの整備。アーティスト名と楽曲名の表記ゆれ、ISRCとISWCの付与、クレジットの表記を揃える。分配の取りこぼしは多くの場合ここから起きる

  3. 入る市場を絞る。既に聞かれている国をデータで確認し、1〜2か国に絞って現地のパートナーを探す。全世界同時に仕掛ける余力は、多くの事業者にはない

  4. タイアップを想定した素材を作る。映像や広告での使用を見込むなら、インストやステム、尺違いのバージョンを先に用意しておく。後から作ると商談に間に合わない

AIを使うなら、記録を残すことが先

制作工程に AI を使うケースは増えていますが、海外のプラットフォームやパートナーからは、どの工程に、どのツールを、どう使ったかを問われる場面が出てきます。制作時の記録(使用ツール、学習データの出所、人間の関与範囲)を残しておくことが、結果的に収益化の条件になっていきます。

BRUSH MUSIC のエージェント業務は MUSIC AGENCY を、個別のご相談は CONTACT をご覧ください。

※市場データは IFPI 「Global Music Report 2026」の発表値によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的・税務的助言ではありません。BRUSH MUSIC は法律事務所ではないため、権利処理の最終判断は弁護士等の専門家にご確認ください。

 
 
 

コメント


bottom of page